丸まる姿が愛らしいボールパイソンは、穏やかな性格と比較的飼育しやすい特性から、爬虫類初心者にも人気の高いヘビです。しかし、快適に長く暮らしてもらうためには、適切な飼育環境や温度・湿度の管理、エサの与え方など、知っておくべき基本がいくつかあります。
本記事では、獣医師がボールパイソンの特徴から具体的な飼育方法までを丁寧に解説します。これから飼育を始めたいと考えている方に役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ボールパイソンってどんなヘビ?

まずは、ボールパイソンの基本的な特徴や性格を把握して、自分に合ったペットかどうかを確認しましょう。
ボールパイソンの基本情報
ボールパイソンはアフリカ西部を原産とするナミヘビ科のヘビで、比較的小型で温和な性格が特徴です。成体の体長は約120cm〜150cmほどで、ヘビの中では取り扱いやすいサイズ感です。名前の由来は、驚いたときに自分の体をボールのように丸める習性から来ています。見た目も可愛らしく、多彩なカラーや模様をもつ個体がいることも魅力の一つです。
ボールパイソンの性格は?
ボールパイソンは非常におとなしく、人に慣れやすい性格をしています。攻撃性が低く、無理に触らなければ噛むことはほとんどありません。扱いやすさから、爬虫類飼育初心者にも人気があり、スキンシップを楽しみたい飼い主にもおすすめです。
ただし、基本的には臆病な性格をしており、環境の変化や過度な接触によってストレスを感じることもあります。構いすぎると、拒食や体調不良の原因になることもあるため、ほどよい距離感で見守ることが大切です。
まずはここから!ボールパイソン飼育に必要なもの

飼育を始める前に、必要なものを一通り準備しておくことが大切です。ここでは、飼育前に用意しておくとよいグッズや、初期費用の目安について詳しく解説します。
ボールパイソン専用のケージ
成体のボールパイソンには、幅60cm以上のケージが理想とされています。しかし、筆者は実際に40×30cmの「三晃商会 SANKO レプタイルボックス ワイド」を使用しており、問題なく飼育できています。ただし、ケージが狭すぎるとストレスの原因になるため、個体のサイズに応じて調整しましょう。
なお、ケージについては専用品を使うことをおすすめします。大きめの虫かごや衣装ケースでも代用できますが、ボールパイソンは意外と力が強く、自分でフタを押し開けて脱走してしまうことがあります。しっかりとロックできる専用ケージを選び、安心して飼育できる環境を整えましょう。
ケージ内のレイアウトは、誤飲やケガを防ぐことを第一に考える必要があります。登り木や装飾は最低限にとどめ、シンプルかつ安全なレイアウトを心がけるとよいでしょう。
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環境に適した床材
床材には一般的に、ペットシーツ、キッチンペーパー、新聞紙、ヤシガラなどが使われます。ただし、それぞれに注意点があります。
ペットシーツは飲み込んでしまうと腸閉塞などのリスクがあり、使用には十分な注意が必要です。キッチンペーパーはめくれやすく、糞尿が広がってしまうことや汚れが目立ちやすいのが難点です。新聞紙はコスト面で優れていますが、破れやすくバラバラになりやすいうえに、インクがケージや成体に付着することもあり、健康面の懸念があります。
筆者はヤシガラを使用しており、吸湿性や消臭性に優れ、見た目も自然で落ち着いた環境を整えやすい点が気に入っています。環境や個体差にもよりますが、比較的おすすめできる床材です。
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扱いやすい水入れ
水入れはボールパイソンの体全体が入るサイズを選び、常に清潔な水を保つことが大切です。専用の水入れも販売されていますが、陶器製やプラスチック製の器で代用することも可能です。
陶器製の器は汚れが落ちやすく安定感もあるため、個人的におすすめです。
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生体と環境に合わせた保温・加湿器具
保温にはヒートマットや保温球を使用します。加湿には霧吹きのほか、小型の加湿器やウェットシェルターを活用するのも効果的です。
さらにケージ内は温度と湿度のバリエーションを持たせることで、ボールパイソン自身が快適な場所を選べるようになります。温度と湿度を保つために、ケージの中かすぐそばに温湿度計を設置しましょう。
室温と湿度調整については後ほど説明しますので、続けてお読みください。
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ボールパイソンの飼育に関わる初期費用の目安

飼育開始にかかる初期費用は、成体の価格を除いて、2万〜3万円程度です。こちらは、ケージや保温器具、床材、水入れ、温湿度計などを含めた金額です。
各飼育用品ごとの費用目安を以下の表にまとめましたので、よろしければご参考にしてください。
飼育用品 | 費用目安 |
ケージ | 8,000〜12,000円 |
保温器具(ヒートマット・保温球など) | 3,000〜5,000円 |
床材(ヤシガラなど) | 1,000〜2,000円 |
水入れ | 1,000〜2,000円 |
温湿度計 | 1,000〜2,000円 |
シェルター | 2,000〜4,000円 |
成体価格はモルフによって異なるため、予算に応じた選択をおすすめします。
快適な飼育環境のつくり方|温度・湿度の管理法

ボールパイソンにとって、温度と湿度の管理は健康を維持するうえで非常に重要です。理想的な環境を整えるために、基本のポイントや季節ごとの調整方法を確認しておきましょう。
ボールパイソンに適した温度と湿度は?
ボールパイソンは赤道近くの温暖な地域出身のため、温度と湿度の管理が重要です。日中は32〜34℃のホットスポット、26〜28℃のクールスポットを用意し、夜間は最低でも25℃を下回らないように保温しましょう。湿度は50〜60%が基本です。
ホットスポットとクールスポットをつくるために特別な装置は必要ありません。ヒートマットをケージの半分のみに敷けば自然と温度の勾配ができます。また、加湿についても水入れの水を切らさないようにする程度で普段はOKです。もし脱皮しそうな気配があったり、湿度が低かったりした場合は、霧吹きを使って加湿しましょう。
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季節ごとの環境調整のポイント
夏は温度が上がりすぎないようにクーラーや冷却ファンなどで調整し、冬はヒーターや断熱材を使って温度が下がりすぎないよう注意しましょう。季節による室温の変化に応じて、器具の出力や使用時間をこまめに調整することが大切です。
ボールパイソンの餌は?種類と与え方

ボールパイソンは肉食性で、飼育下では主にマウスやラットを食べます。給餌のタイミングや種類について以下で解説します。
冷凍マウス?ラット?主なエサの種類
ボールパイソンの主なエサは冷凍マウスやラットです。個体の成長や大きさに合わせて、ピンクマウスからアダルトマウス、ラットへとサイズを変えていきます。
生きたエサは噛まれるリスクや管理にコストがかかるため、基本的には解凍した冷凍エサを使用するのが安全です。
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成長段階にあわせた給餌の頻度・タイミング
幼体は週に1回程度、成体になると2~4週間に1回の給餌が目安です。エサを与える際は、飲み込みやすいサイズを選ぶことがポイントです。基本的には、ヘビの一番太い部分と同程度の餌を与えるとよいといわれています。
以下の表に目安をまとめてありますので、参考にしてください。
成長段階 | 適した餌のサイズ | 給餌頻度 |
ベビー | ピンクマウス~ホッパーマウス | 5〜7日に1回 |
ヤング | ホッパー〜アダルトマウス(M) | 7〜14日に1回 |
アダルト | アダルトマウス(L)~リタイアラット(M~L) | 14〜30日に1回 |
ただし、脱皮前や冬季はエサの量が減るため、個体の状態に合わせて与える必要があります。
万が一、数カ月以上拒食が続く場合は温度や環境など、ストレスの要因を見直しましょう。
まとめ|ボールパイソンの飼育を楽しむために大切なこと

ここまでの内容を踏まえて、ボールパイソンとの暮らしをより快適にするためのポイントをおさらいしましょう。
ボールパイソンは性格も穏やかで、飼育しやすいヘビとして初心者にも人気です。適切な飼育環境と温度・湿度管理、定期的な給餌を心がけることで、健康で穏やかな暮らしが実現できます。
まずはしっかりと準備を整え、ボールパイソンとの生活をスタートさせましょう。
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